不理解理解

文末にはすべて必ず(※個人の考えです)が付きます

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#hon
神薙虚無最後の事件 』読んだ!
以下ネタバレ感想

■総括
多重解決ミステリーに「真実とは受け取り手が信じて初めて成立する」ロジックを適用して物語ることによって作家が届けたいことを探偵が開示するという物語肯定に着地する作品なんだけど、私の思想が脆弱すぎて読みながら徹頭徹尾「うみねこだ……」となってしまいました。
うみねこの当たり判定がデカいだけだし物語肯定や信じることをやるとそこに着地して結果的にうみねこ判定が出てしまうのは分かるんだけど、それはそれとして関係者が全員口を噤み真実を封印して永遠にする『王の宝物庫』は『黄金卿』の言い換えすぎて笑っちゃった。

■概要
大学生の主人公の所属する探偵サークルに神薙虚無シリーズの著者の娘がやってきて、解答編がなかった「神薙虚無シリーズの最終巻の謎を解いてほしい」と依頼してくる。
20年前に一世を風靡した神薙虚無ミステリーシリーズはノンフィクションと標ぼうしていたが、神薙虚無が存在していなかったとしてバッシングを受け絶版になった作品である。
サークル関係者の3人は思い思いに解決法を提示していくが、それによって依頼人の母親の不貞の事実を推理してしまう。
「誰かを不幸にする事実を開示することしか出来ない探偵は不要」という考えを持つ人物は、その事実を打ち破り依頼人は両親たちに愛されていた事実を推理する。

■推理
推理作品の名前がたびたび出てくるし、多分たくさんオマージュがあるんだろうなと思う。
タイトルもメルカトル鮎最後の事件のオマージュで、多重解決で密室で館ものなので贅沢だね~。
ミステリー部分に関しては多重解決ものなのでいろんな推理が見れるのが良い。
二つ名とか偽解決でトンデモ解決もくれるので満足!
メフィスト賞育ちなので初見の時点で多重人格ものだろうな~とは思っていたけど、畳みかける叙述と名前の入れ替わりを多重人格と絡めているところが楽しい!一個一個は分かるかもしれないけど、それらを全部接続した上に語り手がなぜそのずらしをしたのか?というところを名探偵・怪盗というフィクション存在の本懐「エンタメを提供するため」に接続する理屈がポンポンとつなげられて良かった。
私は多重人格の部分しかわからんかった。

■みんなが望む真実
30年も前の物語なので真実を開示することはできないので、あくまでたくさんの解決法を提示してその中で依頼人が一番真実であって欲しい真実を選んでもらおう!という理屈なので、偽解決のうち2つは登場人物以外の正体不明Xさんが登場し、なんなら最初の名探偵が提示する偽解決で登場人物のうちの1人を犯人としたときに止めようとさえするのが面白い。最初から推理の方向性をみんな決めている。
最終的にこの物語は著者と妻からの神薙虚無と依頼人への愛の物語であり、それでいて怪盗写楽からの世の中の人に向けた永遠の娯楽であるというところに着地する。
怪盗写楽は最後までみんなの心に残る物語であろうとしていたらしいけど、作中描写だと主人公や真実の名探偵は神薙虚無シリーズのことなにも知らなかったのでそうなると永遠の物語ではなくなるけど、そこらへんに関しては本を読んでくれた人に限定するんだろうか。
仲間たち内で虚無に対する緘口令を敷いた結果、本が絶版になり関係者以外一切口にしないようになったら本末転倒では!?と思うけど、その程度で緘口令敷かれるほどか?というのもあるのでまぁ深く考えないこととする。
むしろそれくらい秘密にされたら政府陰謀論説の方が納得できるぜ。
物語構造的に、作中真実を覆す真実がまだ残っていそうな気もするけど、私は推理が苦手なのでまた時間あるときにやろうかな~。

■うみねこ
私がうみねこだな~と思ったところを羅列していくぜ!
あくまで思想や構造部分がうみねこ!という感じなのでパクリだ!という指摘ではない。なぜなら真実とは何か?という投げかけをする手つきを取ると大抵こういう感じになるから。問題はうみねこがそれをガチガチにやったのでその構造を見ると「うみねこの構造だ……」となっちゃうこと……。
・真実とはその人が信じるかどうかで決まるということをテーマに進行していく
・受け手が不幸になる真実なんて許さないぜ!という主張をするキャラがいる
・その思想を汲んだ人々が関係者以外の犯人Xを仮定することで罪の所在を外部に逃がすことがある
・館を全焼させることで真実をうやむやにするという思想の実践がある
・名前によって人物を定義できない/肉体によって人物を定義できない思想が採用されている
・探偵は事実を解体する存在として最初登場する
・関係者が全員口を噤むことで真実を隠匿し、それによって守られる幸せな真実『黄金卿』概念
はい。
ネットで調べてもうみねこだ…‥って言ってる人がほとんどいなくて私が……悪いんですか……
ここまで

感想

#hon
科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで 』読んだ!

以下感想

■総括
天才と言われている人たちの発想の飛躍の仕方、意味わからなさ過ぎてかっこいい~~!となったし、アインシュタインが漫画キャラにいたら私の性癖?というくらいの宗教との殴り合いをしていて可愛かったです。なんだこの感想。

■概要
世間的に相容れないと考えられがちな宗教と科学者との関係について、物理学量子力学天文学の進歩を簡単にまとめながら、著名な科学者がそれぞれ宗教に対してどのような姿勢を持っていたのかを注釈していく新書。
地動説と天動説の対立の流れにおいて宗教がどのような立場を取っていたのか、その後「光」「世界の始まり」というキリスト教における重要なファクターがどのように科学で解釈・研究されていったのかを簡潔にまとめている。
要所要所に挟まれる科学者と宗教の関係に関しては、世間で有名な逸話や新聞や本人の著作などを引用しつつ、筆者の思想を交えながらわかりやすく紹介されている。
それはそれとして最終的にどの著名人も神との関係は切っても切れないよね!何にせよ心惹かれているよね!に着地させており恣意的だなと感じる部分はないことはない。

■感想
宗教をベースに科学の話をするというよりも、科学の歴史をベースに宗教と合わせて解説するという感じの本だった。
有名な逸話や新聞の記事について、あくまで創作だと言われているとかのフォローアップがしっかりしていて良かった。
ニュートンのりんごが落ちるのを見て万有引力を発見した話は知っているけど、そこから「どうして月は地球から離れないのか?」で遠心力と同じ理屈を思いつくの意味が分からないよな。そもそもなんの知識もない状態で「目に見えない力が働いてりんごが落ちるんだ!」となるのも意味が分からない。
真面目に考えるほど気持ち悪くなってくる。面白。今まで気にしないように生きていた世界、意味が分からなくてウケる。というようなことを読みながらずっと考えていた。紹介されている例の人たち、みんななぜそこのたどり着けるのか……?となる例ばかりで良い。
そういう基礎知識何にも身についていないので全員「なんか……聞いたことある……!」となるけど何も思いつかない。この前「進化論を発見したのは?」と聞かれてガリレオガリレイ!と元気に答えた人間です。
進化論以前の人は生活と政治ががっつり宗教と癒着していたからたびたび神について悩むのは分かるんだけど、進化論以降・近現代になっても著名な人が神について言及するのは面白い。まぁそういう人をこの著者が選んでいるのかもしれないけど。
とりあえず著者がいいたいことは最後の章のまとめに全部書いてあるのでそこを読めばOk!
アインシュタインで萌えたとこ。宗教に反発していたアインシュタインが「特殊相対性理論」によって時間の不平等性・光の速さはどんな時も一定などを証明することで聖書で唱えられていたものを軒並み否定することに成功したと思ったのに、「宇宙はビックバンにより生まれ膨張し続けている」という「神は「光あれ」と言われた。すると光があった」を髣髴とさせる事象の証明に特殊相殺性理論が使われたり、最終的に仇とした量子力学を論破しようと作った「箱の中の時計」問答も特殊相対性理論で反論されたりした構造があまりにも寝取られで良かったです。何を言っている?
ここまで

感想

#hon
奇巌城 』読んだ!
密室ミステリーシリーズ②

以下ネタバレ感想

■総括
乱歩後期味~!!!!!!!!!1
私は乱歩後期のエンタメ重視のどたばた冒険活劇がそんなに好きではないんですが(好きでないというより前期が大好きなので相対的に後期の評価が低い)、乱歩ってマジで海外のミステリーの流れそのまま汲んでるんだね!?となって面白かったです。
でも冒険活劇ものにしては比較的ミステリー味がして良かったです。

■密室
密室としては、隠し部屋がないことは証明できないが長期間人の出入りがなかった=2週間以上飲まず食わずにいられる人間はいないのでこの部屋の中に人がいるわけがないという密室の成立のさせ方なのかな?
共犯者がいた!は割と最初に除外される可能性だけど、今回はルパンとの知り合いは誰もいないはずという前提が心理トリックになっているのかな。

■ガイドブック
上の予想と大体同じで、ルパンが初対面にも関わらず登場人物を懐柔したというところが密室の鍵になっているという解説だった。
そのような事態は本来ならありえないが、ルパンというキャラクター性でそれを可能にしている点が密室の土台を揺るがす部分らしい。
新本格ばっかり読んでいるのでそれがありえないという前提に「へ~」という気持ちです。新本格は登場人物舞台装置になりがちなので、初対面で全面協力も全然ありだからな。私は新本格の舞台装置的登場人物読み味もとても好き♡
多分古典ミステリーの中でそれをやったということが前提条件の共有の観点で土台を揺るがすという話になるのかな。

■怪盗夜想
私の大好きな怪盗夜想曲というアプリゲームにもルパンが出てくるんですが、そのルパンが2回くらい「死んだと思ったら生きていた」ネタをやってくるんですが滅茶苦茶原作踏襲しているんだな……ということが分かって良かった。愛してるよ……。ついでに怪盗夜想の死んだと思ったら生きていたはびっくり要素だけでなくちゃんと入れ替わりトリックや双子ネタを絡めてくるのですごい良いです。
ガニマールもエルロックも出てきてウキウキしていたけどマジ物の噛ませ犬になっていて笑っちゃった。百歩譲ってガニマールは自創作のキャラだからいいけど、エルロックはダメじゃないですか!?!?
それはそれとしてルパンもホームズも真面目に読んできてなかったから、いつか真剣に取り組まなきゃな……。
ここまで

感想

#hon
モルグ街の殺人 』読んだ!
密室ミステリーシリーズ

以下ネタバレ感想

■総括
有名な最初の推理小説でいいんだっけ?
青空文庫だと古いからかオランウータンじゃなくて猩々って訳されるんだね。青空文庫読みにくいぜ!
思ったよりちゃんとミステリしていたというか、滅茶苦茶江戸川乱歩が参考にしたフォーマットの味がする……!と思って面白かった。

■推理
江戸川乱歩初期作品の、精神を推理するその道筋を描くことが目的のミステリーの味がする―!
乱歩滅茶苦茶参考にしているのが伝わる。さすが名前を勝手に借りるだけある。乱歩勉強してからしばらく経って読むポー面白い。
殺戮オランウータンが有名だしそっちの印象が強かったけど、窓辺りの密室作成部分とか参考人すべてが他国の人間の叫び声だと証言したとかの推理部分が思ったよりちゃんとしていてびっくりした。最初の推理小説だと考えると本当にすごい。
猩々と翻訳したせいでファンタジー感というか殺戮オランウータン感が強くなってしまったが……。
過去の私はホームズの『まだらの紐』などが苦手だったんだけど、今読み返したら受け取り方違う気がする。

■ガイドブック
最初の密室の座を他の小説に取られたという旨が書いてあって、確かに私も殺戮オランウータンの方の印象が強くてモルグ街の殺人のこと密室だとあんまり思っていなかったので申し訳ないぜ!
筆者が強めにモルグ街の殺人はちゃんとしたミステリーだぜ!と言っていたので良かった。
思ったよりさっくりとした解説だったので、これは本当に密室の論評というよりガイドブックって感じだ……。
この読み味だとガイドブック自体は1時間くらいで全部読めちゃうんだろうけど、それは私の本意ではないので索引代わりにいろんな作品読むようにします。
ここまで

感想

#hon
ドン・キホーテの消息 』読んだ!
神保町ブックフリマ で面白そうだったから買った。
探偵とドン・キホーテの組み合わせだったのでメタフィクション入ってそうで面白そうだった。

以下ネタバレ感想

■総括
哲学的SFだ!全然わからねぇ!
物語として語り手によって語られることは現実か空想か曖昧である(それは物語外の現実世界でも同様である)というのと
物語は語り手と読み手がいることで初めて成立するというメタフィクションをやっているような気がしなくもない!でも基本的には分からない。

■概要
ペット探し専門の探偵である主人公のもとに、裏社会を取り仕切っていたあるが痴呆になってしまった老人を探してほしいという依頼が舞い込む。
捜査していく中で、脱走した当時に老人が自身のことをドン・キホーテだと思い込んでいたらしき証言と証拠を見つけ、世の中では「ドン・キホーテの第四の遍歴」という街頭演劇に扮して劇場型犯罪が多発していることを知る。
それと並行して、400年の時を超えて復活したドン・キホーテはサンチョパンサの「自分を島の王様にするいった約束を果たしてほしい」という願いを受けて旅を始める。
探偵の一人称の語りでもう一人の語り手のドン・キホーテの冒険が現実に存在するテキストであることがわかる。
段々と探偵の語りは崩壊していき、ドン・キホーテは理性を取り戻しながら民衆を世界の崩壊へと導き、2人の語る世界は一つになる。
最終章では何者かわからない「わたし」が読み手である「あなた」がいたから最後の世界までたどり着くことが出来たと語り終幕。

■探偵とドン・キホーテ
探偵とドン・キホーテの組み合わせ、良いよね……。事実を暴く探偵と、事実は真実の敵であると語ったドン・キホーテの対比だけで満面の笑み。
ドン・キホーテ読んだのすごい前なのであんまり詳細覚えてないけどね!読み直すか……。
その上作中の探偵は、人間の探偵ではなくペットの探偵だから物語中の事件に追い越されることはないという理屈がすごい可愛いよ……。
だから事件の概要を全然解説してくれないので私は困惑したけども、探偵も困惑していたので可愛いねと思いました。完全に語り手としての機能しか期待されていない。この物語自体がただ語ることしか求めていないっぽいので、それで十分なんだと思います。最初から信用ならない語り手かつ信用できない世界を観測する語り手であることを要求されていて大変だなと思いました。
ドン・キホーテの「「わしを狂人とあざ笑うものは、自分の生きる現実ばかりが、ほんとうのことと信じ切っておる。だが現実というものはそんなに単純なものではない。正気と狂気がせめぎ合う場所、それがこの世だ」(p.222 l.8)がサビなんだろうな……。
ドン・キホーテに関しては、途中まで探偵が探している老人の一人称の語りかと思っていたら、老人は当分前に死んでいたこととドン・キホーテの語りが作中創作であることが明かされて宙ぶらりんになり、それからドン・キホーテの方が現実の語りなのではないかと読み手に思わせる手つきが好き。現実と空想の境目なんて存在しないんだよ!
途中サンチョパンサに民衆の愚かさを擦らせるパートが始まって面白かった。それと同じ分量で最終章の読み手肯定が入ってきたのでまぁ良いかと思いました。

■メタフィクション
ドン・キホーテを踏襲するならメタフィクションやるでしょう!と思っていたけど、最後に語り手と読み手の関係で着地したので良かったです。
若干唐突な感じはあるけど、観る人が現実と空想の線引きを行うという話に置いて語り手と読み手の関係は必須というところからここにきているのだろうな~というのはなんとなくわかるので個人的には良い。
「わたしはいまここにいる。あなたが読んでくれたおかげで。わたしはけっして一人ではなかった。長い遍歴の果てに、ようやくそのことに気がつくのでした。いままでどうもありがとう。けれどもここでお別れです。もういないわたしの代わりに、あなたが白い雪原を見る。残されたページの余白をじっと見つめて。ここから次の物語が始まる。」(p.267 l.5)
私は情景描写をそぎ落とした一人称の語りが好きなので、最終章の締め方が案外好き。いや全然わかんないんだけど。
ただ主人公であるわたしと一緒に行く読み手のことをサンチョのような従者と表現されて、作中のサンチョは衆愚とイコールとされていたしその部分が直近にあるのでウケちゃった。いや、私は衆愚なので何も嘘じゃないんですけど!?

■わからないこと
探偵の世界の曖昧になり方がどういうことかわからなかった。
途中で老人の担当医が別のキャラクターの宝探しが趣味という設定を引き継いでいたり、ドン・キホーテの街頭演劇が世間に流行っている件などがわからなかった。
あと女と探偵のセックスのシーンはなんだったのかわかりかねた。性欲の話?わからん。わからないところ、別作品の引用ネタだったりするのかな。
ドン・キホーテのことを世界の人が全然知らないという設定も、この世界とは別の世界ということを教えるための設定だったのかな。別の世界でも驚安のドンキはあるんだ……。
あとドン・キホーテ周りの黙示録の引用部分とかもよくわかんなかったな。途中からいろいろな有名作品のネタを引っ張ってきていたので、物語を空想と同じものと扱って現実か空想かわからないという話に接続させているのかな。
というか今回も黙示録出てきて笑った。最近の私の黙示録率高いな。


■フォント
作中のフォントが探偵の語りとドン・キホーテ語りで綺麗に別れていたのが、途中で段々混ざっていくところも境界線ずらしをしているんだな~と思って面白かったです。フォントで遊べるの良いな。
ゲームでもできそう~と思ったのでメモ。
ここまで

感想

#hon
ポピーのためにできること 』読んだ!
なんで買ったんだっけ……覚えてないけど積んでいた。

以下ネタバレ感想。

■総括
メールや手紙しかない状態で事件を推理する奴滅茶苦茶好きなので楽しかった~。
色んな人のメールのやり取りを見ることで相手によって態度が変わるいろいろな側面を見せられているのに、手紙以外の情報がないので書面上のその人の性格しか知ることができない!好きな奴だね~。
そういうゲーム作れそうなので参考にしよ~と思いました。

■概要
2人の大学生は、教授にとある事件の関係者の手紙やメールのやり取りをまとめた事件資料を提供され、事件の概要解説を受けないままどのような事件が起きたのか推理する課題を提出される。
その事件資料はある裕福な家庭の少女が脳腫瘍になったことから始まったクラウドファンディングとその家族の所属する劇団の劇団員たちが送受信したメールや、イベントに関する告知、電話の録音などのメッセージをまとめたものだった。
メッセージを読み進めることで、メールをやり取りする人々の人間関係や性格などを推理していく。
途中で教授から事件の概要の解説を受けつつ、実際の事件で何があったのかについて事件の真相を暴くことに成功する。

■メールしか見れない状況
好きだね~!
メールものあるある、「存在しない登場人物がいる」という欲しいところに欲しい物くれるので喜んじゃった。
加えて、途中から教授が参加して実質読者への挑戦状状態になるので面白かった。
推理部分に関しては、行間を埋める出来事で一番納得する物語を作るという感じが大きいな~と思っていたけど、終盤は割とアリバイの精査を行う手順になっていたので、ミステリーのワイダニットとハウダニットの両面からやってくれるのでどっちも楽しめて良い。
ついでに私は感情を邪推して物語作るのヤバいな……と思っている人間だけど、推理をする2人と教授が法曹関係者で弁護のために調査しているという前提があるのでちょっとマシになるので良かった。
加えて、周りの人からどれだけ邪険にされてもやっほー!から始まる長文のメールを3分おきくらいに送ってくるし私と貴方は親友だよねとしつこく言ってくる上に自分より立場が下のイマジナリーフレンドを作ってメールのやり取りをしているところに加えて、自分から他人の罪を被るために自首した面白いキャラクターがいるのですが、最後の最後に調査をしていた2人に対してそのキャラクターが「あなたたちが私を救ってくれたから、あなたたちに報いたいな❤」でメールを送ってくるようになるというオチでカウンターが入ってるので全部OKしたところが大きい。
完全に第三者として他人のメールを盗みみていた状況から、その矛先が自分に向いた瞬間のうわッという感情。お前も当事者だ。にっこり!

■人間関係
後半に出てくる情報でまたキャラクターへの印象が変わるので、あくまで手紙からの側面しか知りえないというのは前提として、嫌な感じのやり取りがたくさん見れるので面白いです。
誰かの前だと丁寧な文章なのに嫌いな人の前だと一文しか返してくれなかったり、あえて煙に巻く話し方をして相手に誤認させたり、誤情報が変な形で噂話になったり、不の人間関係大盤振る舞いだぜ!
それはそれとして登場人物が多すぎて読むのは大変ですね!キャラクターの名前で背景色変えてほしい。そんなことすると雰囲気が無くなるので自分でやってください!

■翻訳
海外作品だと毎回翻訳について言及するなこの人……。
以前、私は海外作品の冗長な情景描写に苦手意識がある可能性があるということに気付いたのですが、こちらの作品は全文メールによる口語体なので読みやすい読みやすい!
私好みです!そして自分の読みやすい文章が分かって良かった。
日本の作品だと情景描写長くても読めるのに不思議だね。一回表紙隠して翻訳かわからない状態でどうなるのか見て観たいな。思い込みかもしれないし。
ただ海外作品って登場人物が多い+カタカナで私が名前を覚えられないというのが相まって人間関係が把握しにくいというのもあるかも!?
海外作品でもくじの前に登場人物一覧があるの多い気がするんだけど気のせいか?
ここまで

感想

#hon
サバイバー 』読んだ!
Twitterで去年好きな作家が献本で貰ったと言及していたのを見て買った積読を崩した。

以下ネタバレ感想。

■総括
わからないけど好きだ……!
カルトの生き残りかつ教祖に祭り上げられた男が自分の人生をブラックボックスに再話することで上書きしていく構造+章とページ数が降順になっている構成が私の好きな奴だね~!
最後の終わり方が読者を突き放す構成になっているのも好き。
テンダーは生き残ったのかについて、世間的にはテンダーは死ぬんだろうけど、教祖や連続殺人犯として死んだだけでこのあときっと生き残って別の人生を歩んでいる可能性も十分に残っているのが好きだ。

■概要
テンダーは10年前集団自殺したカルト集団の生き残りであり、一世を風靡した教祖であり、飛行機のジャック犯であり、現在その飛行機は墜落の真っ最中である。
彼は自分の人生について飛行機のブラックボックス(すべての飛行機に乗っている滅茶苦茶強固な録音装置)に語ることで、後世に自分の人生について残そうとする。
長男以外の人間は外界に出て稼いだ金を宗教に仕送りする生活を定められているテンダーは、10年前にカルト集団が集団自殺でなくなった後も教義で定められた仕事を続けていた。
そんな中、テンダー以外の信者の生き残りが全員死亡する事件が起き、それをきっかけにテンダーを教祖とした宗教指導者へとマスコミと未来予知の出来るファーティリティという女性によって仕立て上げられる。
しかし、信者の死亡がテンダーの殺人によるものだという嫌疑をかけられてから一転、ファーティリティと本来の殺人の犯人であるテンダーの双子の兄と逃亡
することになる。
逃亡の最中にカルト集団での生活でのトラウマを克服したテンダーは、ファーティリティの「今日おかしな飛行機ハイジャックが起きる」という予言を覆すために該当の飛行機に乗り込み、すべての乗員を飛行機から下ろしたところで、「おかしな飛行機ハイジャック」を起こしたのは自分だと気付く。
今までの顛末を語り終えたテンダーは「今日は実に美しい日だ」と締めくくり、「テスト、テスト。1,2--」の台詞で終幕。

■テンダー
カルトに育てられた時に植え付けられた記憶を本当だと信じて生きてきた、他人からの命令でしか何も決めることが出来なかったテンダーがちょっとずつ変わって、他人から押し付けられた物語を全部全部上書きして前に進む物語なんだな~これ!語りのテンションが気持ち悪いし不明瞭な描写が多すぎるせいでそういう風に取りにくいんだけど……割とジュブナイル的な物を感じる。
決められた運命はカルトの方で提供された側面もあるけど、ファーティリティの予言もそうだし、テンダーを教祖に仕立て上げたエージェントも同じように機械的な未来予測でテンダーを定めた未来に連れて行っているし、ついでにテンダーが働いていたその日に提供される料理に関するテーブルマナーを雇い主に教える仕事も「想定した未来とそれへの対処法を提供する」点では決められた未来を提供する仕事なんだよな~と読み終わってから思いました。
気持ち悪いのに爽やかだ、意味が分からない。私は好きだ……。
語りによって表現される部分が曖昧過ぎて、最後の最後まで双子の兄やファーティリティのことをテンダーの多重人格のうちの一人だと思って読んでいたけど、割とその部分否定する要素は少ないよな。
でも最後に雇い主のところでファーティリティの存在が認知されたから違うか。これは私がそう読みたかったからそう読めないかな~って思った要素でしかないです。
それにテンダーは最初からブラックボックスには自分が死んだと世間に信じさせる+連続殺人犯/カルト集団の教祖と世間から認識されている自分の人生を上書きすることが目的だから、そんなに信ぴょう性はないんだけどね~。少なくとも、テンダーはそういう風に世間に認知された方が都合がいいと思った情報を残していると思って聞くくらいが丁度いいんだろうと思って受け取ることにする。
ついでに運命からテンダーが逃れることが出来るのか?というと、そもそもファーティリティの予言には長期的に見れば「私もテンダーも死ぬ」し短期的に見れば「私もテンダーも幸せになれる」というのがあるので予言から逃れることはできないし、わざわざ逃げる必要もないというのが定まっているので、どっちかというと重要なのは自分で人生を選ぶということで、テンダーがそれをできたのが飛行機ジャックである時点でもう、それでいいんですよ私にとっては……!!!!テンダーが生きていようが死んでいようが……!!!!!!テンダーがこの物語を語り、それを残すと決めたこと自体が好きなので……。
でもあの爽やかさ的に、多分テンダーは生きているんだろうなと個人的には思っている。いや、どっちでとっても良いというのが前提で、私はそっちの方がしっくりくるという話です。教祖であり連続殺人犯であるテンダーはちゃんと死んで、別の誰かの物語が始まっているんだろうな~。
訳者あとがきに、作者がサバイバーの顛末についてwebサイトで言及しているって書いてあって作者に対して「余計なことを……ッッ!」と思ったのは内緒だぜ!そして訳者がweb追記の内容に触れず、「完全に著者に従う必要はなく、解釈は読者の自由意思に任されている」と言っていてキスしちゃった♡
作中でそう書かれているならまだしも、外部のテキストにそう書かれても私はスキップするよ。たとえそれが私の予想した結末と一緒だとしても、そうなる可能性があったかもしれなかった物語と、そうだった物語は別物なのでね!

■構成
章とページ数が降順になっているの、本だから出来る上にテンダーのテンダーとしての人生のカウントダウンなので私の好きなギミックです!!!!ラブ!!!!
最初は意味が分からない気持ち悪い語りなのに、最後に近づくにつれて物語が終わってしまう寂寥感がある。
特に最後の方の章はどんどんページ数が短くなっていくので、「ま、まだ5章もあるんだから……で、でもあと25ページ!?」ってなるのが、本なのにライブ感があってすごい良かった。テンダー、行かないでくれ……いや行ってくれ……。
そして0ページで何が起きたのか我々には明かされない構成~好きだ~!webで結末を公開するな~!
えーというかこの構成カッコよいからいつか真似したいな。これゲームだとどうすればいいんだろう。
ぱっと思いついた奴、どうやっても射精カウントダウンみたいになるので全然良くない。
あとはシークバーだけど、シークバーはシークバーでしかないからライブ感とはつながらないな今の私の思想だと。含蓄や閃きが足りない。
紙の本で一次創作やるかなぁ~、やるなら日記形式とかになるからやれそう?まぁ気長に考えてみよう……。

■翻訳
翻訳本だから厳しいかと思っていたけど、再話形式なので自己言及のみ+情景描写がほとんどないから読みやす~。いや文章としては支離滅裂な部分があるので理解はしにくいんだけど、個人的な文章のテンポとしては読みやすかった。
『アルジャーノンに花束を』も楽しく読める人間なので、もしかしたら一人称かつ独りよがりな文章とか日記帳の話なら読みやすいのかもしれない!良い発見。
今度試しに探してみよう。
ここまで

感想

#hon
本が読めない32歳が初めて芥川龍之介を読む日
これが面白かったので自分でもやってみよ~と思って音読した。
丁度手元に人からもらった短めの小説を集めた奴があったのでいい機会だったのもある。
読んだのは以下の3本。
・『夜釣 』泉鏡花
・『東京』乙一
・『一人二役 』江戸川乱歩
すでに3本読んでいる時点でそこまで精読ではないんだけど、そもそも私は音読という行為が好きだからいっぱい音読したかった………!!!!!!!!
子どものころから読み聞かせが大好きだったので、自分でやるのも楽しいよ~。そういう訳なので精読というより音読してて楽しかった~という感想になる。

多分聞いてくれる人がいたら一行ずつ考えを話すとかはできるんだろうけど、いない場合は一文ずつ書き出してそれに対して感想を書く方が向いているな~とも思った。
音読は音読を楽しんじゃう。

以下雑感。

■『夜釣』
文章を楽しむという観点だと『夜釣』が一番読み返し甲斐があった~。淡々とした文章なのに不気味で、最後の締めが超格好いいね~。自分の子どものはずなのに、なんだか知らない生き物みたいに見える後半の畳みかけが良質のホラー映画を見ているようで良かった。文章も読みやすいように見えて、単語の反復やちょっと止まる表現があったりするのは流し読みだと気にしない箇所でよかった。
『手もしびれたか、きゅっと軋む……水口を開けると、茶の間も、框も、だだっ広く、大きな穴を四角に並べて陰気である。』
私流し読みだとここ引っかからないんだけど、どういう語順!?でも不穏な雰囲気が畳みかけられているようには感じる気がする。
あと三点リーダーの使い方と句読点の使い方が独特で面白い。そこで区切るんだ……となるところが多々。

■『東京』
『東京』も起きた事象の大変さに対して文章が大変淡々としているんだけど、こっちは逆に優しさが満ち満ちているので不思議だ。前半は冷静なんだけど、後半になるにつれて口調はそこまで変わらないのに晴都君に対する視線に冷静さが欠けてくるのと、柔らかい口語体が増えたり文中に感情表現が増えるからなのかな。それはそれとして処女かどうかって検査できなはずと思って若干集中はできなかった。いや処女受胎の話したいからそういうことにしないといけないのはわかるんですが……。

■『一人二役』
すいませんこれに関しては単純に私の性癖の話だったから文章がどうとかそういう話を置いときます。
1人の男が変装して妻に言い寄った所、妻がそちらの男に恋をしてしまった故妻に入れ込みながら変装した自分に嫉妬する男、愚かわいいね~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
人のことを自分の暇つぶしの一つとしてしか認知していなかったくせに、最終的に墓穴を掘ってずぶずぶになっちゃったので本当に可愛い。顔に傷をつけちゃったりしちゃったりまでしてすごい。自分殺しが性癖なので、ウルトラミラクル大好き。
場合によっては語り手が男に対してそれを提案していた可能性も残している辺りが憎いね~。江戸川乱歩は特定作品を執拗に読み返して文体が体に叩き込まれているので一番音読しやすかったけど、それ以上に「この単語が来たということは~????この男も金持ち放蕩息子で他人のことを自分の欲望を満たすための何かとしか思っていないろくでなし~~♡♡♡」という行儀のよくない読み方をしてしまって楽しかったです。ちょくちょく縞棒の浴衣とか犯罪を誘発する語り手とかの明智を髣髴とさせる要素があってニコニコしました。
妻が一番怖くて可愛い♡

本当は『山月記』も読もうとしていたんだけど、冒頭から意味の分からない漢字が連打されて全然音読向きじゃなくて心が折れました。
『隴西[ろうさい]の李徴[りちょう]は博学才穎[さいえい]、天宝の末年、若くして名を虎榜[こぼう]に連ね、ついで江南尉[こうなんい]に補せられたが、性、狷介[けんかい]、自[みずか]ら恃[たのむ]ところ頗[すこぶ]る厚く、賤吏[せんり]に甘んずるを潔[いさぎよ]しとしなかった。』
これを教科書で音読していたんですか!?!??本当に!?!??!?
ここまで

感想

#hon
しあわせの書―迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術― 』読んだ!

これの裏切り本(ぱっと見期待できなさそうだけど読んでみたら想像以上に面白かった本)で紹介されていたから読んだ。

以下ネタバレ感想

■総括
仕掛けが手が込んでいてすげ~。あと文体は古臭いけど割と読みやすかった。
ギミックについての詳細な言及は一応しないでおくけど、ギミックに対する感想は述べるので読む予定の人はスキップしてください。

■概要
なぞの名探偵ヨギガンジーはひょんなことから死んだ人間が別の場所で目撃されるという事象を見聞きする。
死亡したといわれている人間が共通して傾倒していた宗教「惟霊講会」について調査するうちに、その団体の後継者争いの判定役を担当することになる。
後継者の一人は読心術(相手が今開いている本の先頭の単語が当てられる)が使える瑠璃子、彼女は死んだといわれている人間の一人である。
もう一人の後継者は現当主の孫だが、神通力のような特殊能力はない男。
後継者争いの勝負方法は断食であったが、瑠璃子とその仲間が不正を働いていたこと、断食勝負で参加者全員を餓死させようとしていたことをガンジーが見抜き、孫が後継者となって終幕。
だいぶ端折ったけど大体こんな感じでしょ!

■ギミック
興味深い・関心がある系列の面白ぇ~だった。それはそれとして物語のテーマ自体にはあんまり絡まないので、再読するか?というと私はしない塩梅。
思いついたとて実践するの滅茶苦茶大変だったろうな~作者がすげ~!
超常現象をテーマにしているのに、何事にもタネがあるとしている姿勢なの面白い。作者がマジシャンもやっているらしく、種も仕掛けもあります!をやってくれるのは楽しいね。

■シナリオ
ギミックが重要ではあるけど、ギミックありきではないので私は楽しく読めたので良かった。
まぁギミック無しだととんでも系のミステリーではあるんだけど、展開が早くさっさと話が進むので良かったです。
それはそれとして登場人物が超常現象に対してガンジー以外ノーガードなのすごい。私なら絶対別の本用意させるので……。
超常現象を信じている人々の集団だからなのかな~。
テンポの速いわかりやすい勧善懲悪型のシナリオなので人は選ぶかもしれない。
ここまで

感想

#hon
九十九十九 』読んだ!
あなたは今、この文章を読んでいる。パラフィクションの誕生』で紹介されていたので読んだ。
『コズミック』は読んだことあるけど、それ以外の清涼院流水作品は未読!
『ディスコ探偵水曜日』未読!
西尾維新の『ダブルダウン勘繰郎』と『トリプルプレイ助悪郎』は読んでいる。


以下ネタバレ感想。

■総括
世界を見通す神通理気のある探偵がこの世界が物語の中であると気付かないわけがないというあれそれを取り入れてメタで遊んでいることは、わかる!
話の区切りによって読んでいたページがマトリョーシカ式の作中作であることが分かる構成になっている上に、その時系列を変えることで作中世界がつながっているという二重構造になっているようになっていることも、なんとなくわかる!
この作品世界が『コズミック』に出ていたのとは違う九十九十九によってつくられた世界で、彼の自意識の主体はこの物語の外側に設定されている……のか!?ここは知らん!
とりあえず読んでいて面白かったのでヨシ。あとは分からん!

■概要
日本探偵クラブに所属する神のような推理力の名探偵、九十九十九が主人公の7話構成の物語。
1話は九十九十九の生い立ちの説明とヨハネの黙示録の見立て殺人を解決する話。2話以降も同様だが九十九十九のもとに1話と全く同じ内容の小説が届いたという2話が始まる上に、2話の九十九十九は1話の内容は大体あっているが細部が異なっていている旨を述べる。
話数を重ねるたびに今まで読み手が読んでいた(と思われる)小説が届いていくが、途中で掲載の順番が入れ替わる。
話数ごとの九十九十九は連続した同一人物ではなく、それぞれ異なった人格を持ったキャラクターだったのだ!それぞれの主人公の九十九十九はタイムリープなどを駆使して未来・過去の話に干渉していく!
どう書けばいいんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!諦めました!!!!!!!!!!!!!!!!

■九十九十九
あたまが三つある奇形の自分を世界が受け入れてくれるわけがないという感情から『九十九十九』の世界に閉じこもったJDCの九十九十九じゃない九十九十九。かわいいね。
自分で外の世界に視線を向けるように『九十九十九』の世界を構築しているのもまた現実肯定って感じだ~。
少年社中の『パラノイア★サーカス 』のフィクションと現実の肯定を思い出すけど、九十九十九はどっちかっていうと現実には帰った方が良い(それでも創作の世界は居心地がいい)のバランスだったように受け取った。そこら辺のバランスの違いを見るのも楽しいね。
多分そういうことをしているんだと思うんだ……構造が複雑で確信できないのがウケますが……。

それはそれとして母親信仰があるところはちょっとキツイぜ!
まぁ聖書を元にしているから聖母マリアとかそういう側面の見立てもあるのかもしれない。

■メタ構造
メタ構造でいっぱい遊んでいて楽しそうだった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!1
今までの話が作中作になるという構造だけでも面白いけど、話数を入れ替えてタイムリープまで入ってくるともうわからんね!
この世界は自分を認められない九十九十九によってつくられたもので、九十九十九はこの世界を愛しつつも外に出ようとも願うという塩梅が現実世界肯定とフィクション世界肯定になる塩梅で良かった。
物語を物語る話で用いられるトリックが見立て殺人という物語ベースの物なのもよい。
それはそれとして私は作中外の物語を異様に引用して展開していく奴は読むのがマジでかったるいと思っているので、かなりそこらへんは斜め読みだ!できれば作品中で見立てられる内容の解説を入れるか、作中が初出の内容で見立てしてほしいぜ!
でも九十九十九は見立て自体は重要じゃないし、この話でとうとうとヨハネの黙示録とかの解説されても疲れるから良かったのかもしれない。
見立てること自体が目的であって、見立て元がどういう内容かどうかはそこまで重要ではないような気がする。いや元ネタ知らない人間が重要かそうじゃないかは判断できないんですが……。
とりあえず一応全体読めたから、もう一回パラフィクションの方を読み直すか~。
ここまで

感想

#hon
あなたは今、この文章を読んでいる。パラフィクションの誕生 』読んだ
メタフィクションについて勉強している時に買って積んでいた本を読んだ。

以下感想。

総括としては語り手論+その語り手は作者とイコールではないというのがベースで進むので私の肌に合った。
あとゲームと本のメタフィクションの扱いの違いについての資料を引用してくれているのでそこも面白かった。それはそれとしてパラフィクションはゲームにも流用できそう。

個人的にメタフィクションを本でやるのって難しいな~と思ってたけど入れ子を繰り返すことで作中世界だと思われていた部分を非現実に落とし込む奴とか面白そうだからやってみたいな。私が作る場合はゲームだけど。これ選択肢含めた場合どうやれば面白いのかな。
メタフィクションについての定義というより、それを用いた複雑な構造の解説がメインなので面白かった。いろんな作品が紹介されているので今度それも読んでみようと思いました。
全体的にいろんな資料を引用しながらさらっと触れる感じなので読みやすかった。
ここまで

感想

#hon
見えないものを探す旅 』読んだ!
ゲームさんぽ』で紹介されていた本。

以下感想。

総括としては知識を持ってさんぽするとより深く世の中を見ることが出来るよ(見れるといってもあくまで自分で無理やり引いていることにも自覚すべきだよ)というスタンスなので読みやすかったです。
作者の方が能楽師・大学教授・ゲームのプロデューサーというすごい肩書なのでその時点で面白い。この人ゲームさんぽに呼ばないんですか!?
私が能に全然詳しくないんだけど、解説が読みやすいのでとりあえずするすると読めて良い。
こちらの本でも、知識があると逆に見えないものも出てくるよねという話を触れていて最近の摂取しているものに通じるところがあって面白い。
色んな参考書を読んだ結果要点が分かりやすくなる現象が起きている。
ここまで

感想

#hon
翻訳文学ブックカフェ 』読了!
最近翻訳について考えていたから読んだ。
確かなんかのブックフェスの時に買った。若島正先生(面白い詰将棋作る人)がいたから買った。
積読はするもんですね!

以下感想

総括としては言うまでもなく翻訳者によってスタンスは全然違うし、こりゃ翻訳者によって合う合わないが発生するわ!がよくわかって面白かったです。

■翻訳は二次創作的という私の考えについて
全体を読んであながち間違ってはいないなと思ったけど、あんまり正確でもないと思った。
どっちかっていうと楽譜を貰ってそれを演奏するが近いんだろうな。与えられた音階を元にどう表現するのかを試行錯誤する作業っぽい。
二次創作だと余白を足したり引いたりしすぎるイメージが強くなる。
そして私は楽譜を貰ったら自分で演奏したい!という風に言った方がしっくりくるかも。

土屋政雄先生の「文学作品の場合、原作者にどういう意図があろうと、翻訳者が勝手に訳せばいい」[p.211 l.18]とかはその傾向が強くて勝手に補強になった。
多分この思想は翻訳という行為をしている時点で意図を完璧に受け取ることが出来ないという前提があっての「勝手」という話なんだろうなと思っている。
もちろん作者の意図を訳すことを念頭に置いている人もいる。バランスのとり方が人によって全然違って面白い。
何を基準にするかが人によって違うのも面白い。
作者に会いたい人会いたくない人とかも違うし、それによって翻訳の質が上がる人もいる。
インタビューはうけてないけど、もともとの翻訳文はクールな感じだったけど、作者にあってみたら温和な人だったから翻訳を全文温和な感じに書き換えた人とかいるらしい。(私はそれをされたら切れると思う
翻訳する際にも、本文や作者と全く別軸で、出版される時代に合わせた翻訳をするというのも面白かったな。
改めて考えると、今風じゃない表現をターゲット層に合わせて変える作業を受け入れてくれるのってすごいよな~。
日本の作品でも古い作品はやっぱり読みにくいもんな……。
南総里見発見伝とかの、マジの古典とかまで行くと現代語訳があるけど、近代文学ってあんまりそういうの出ているイメージないもんな。軽く調べてもこれ くらいしか引っかかってこない?また調べてみよう。
そう考えると日本文学よりも翻訳された本の方がストーリー重視で長く読み継がれそう。
時代性を保ったままの作品はストーリーより古典・学問として親しまれるというか。
翻訳文学ってストーリーを重視するのか表現を重視するのかそれ以外を重視するのかがマジで翻訳者次第だ……というのが強まった。

■音楽的な話
面白いのが、多くの人が「ダイナミック」「リズム」「スピード」を大事にして翻訳していると言っていたこと。
これに関しては、私が最近の漫画原作を忠実に再現するアニメを「漫画の時とテンポが合わね~」と感じることがあるので勝手にシンパシーを感じている。
作品内の重要な要素そうじゃない要素に含まれるテンポやスピード感や空気感を保とうとする姿勢自体は滅茶苦茶好ましい。
ただ、村上春樹が海外文学は読むが戦後文学は読まない「いわゆる文芸日本語が読めないから。」「戦後文学って感覚的に弱いですね」[p.242 上 l.15]って言ってるのと逆に、私は翻訳文学が感覚的に文書として重くて読めないからこう……どうしょっかなぁ!って感じです。
たぶんその大事に再現しようとしているテンポやスピードが私にとって重いんでしょうかね!?村上春樹も割と読めないし。

あとこれは本文に関係ないけど、注釈に書いてある翻訳文がどれもこれも目が滑ったので本当に……読めないんだね……!って思って面白かった。
読んでください。
ここまで

感想

#hon
ゲームさんぽ 専門家と歩くゲームの世界 』読了!
知らない人がTwitterで勧めていたので買った。

大変良い。
以下感想

総括するとゲームさんぽ自体は楽しく拝見していて、本書もとても面白かったです。
対談形式だったり講演式だったりで、個人的にゲームさんぽをそのまま本にした感じがして良い~。
ゲーム以外の先生自身のバックボーンや思想について触れられるし、それらも含蓄があって楽しいんだ。

■注釈
ゲームさんぽ自体、寄り道をすることで見える世界という思想で作られているというのが述べられているんだけど、注釈がそれを体現していてよかった!
本文では登場した先生とインタビュアーの人との対談がまとまっているんだけど、ページの下1/5が注釈スペースになっていてまず広い。
そして注釈も、言葉の解説だけではなくてその言葉に関連する書籍やニュースについての説明があるのがとても楽しい。
それも注釈を書いている人が解説の人だったりインタビュアーの人だったりで、みんなで一緒に書いている感じと雑談的脱線って感じで良い。
解説してくれる先生によって語り方も全然違って楽しい~。
丁度注釈で言及されていた本を並行して読んでいるところだったのでウキウキしちゃうね。

■ゲームと知識
読む前は、知識や専門性があると世界が変わるよねというのを前提にやっているのかと思っていたんだけど、本文を読むと「あなた自身も専門性を持っている」というのが大前提にあるのが驚いた。
ここにおける専門性は体系的な知識ではなく、個人に紐付いた体験や感想、感覚のことです。
何を見ても自分が思い出すことがらがあって、それをあなただけの気持ちとして扱ってくれているし、自分以外の人の気持ちや知識があるとまたあなたの気持ちが出てくるというスタンスでいてくれているのありがたいな。
たしかに最初のゲームさんぽがなむさんのお子さんとゲームをする奴なんだもんな、そうだよな~。
あと建築・景観に出てきた「作り手と使い手。情報の送り手と受け手。両者のあいだに上下の関係はなくて、肩を組みながら、目線は合っていないけど、同じモノを見ながら考えているみたいな、そういうコミュニケーションがあるべきかと思います。」[p.74 l.6]がとても良い。
ゲームっていうツールを使って、プレイヤーと作者が同じものについて考えるというスタンスが私の目指したいところなので、勝手に喜んでいました。別に正解なんてなくて、それについて考えること自体が嬉しい。
そういう話をした後に、法律の話でゲームは法的に「映画の著作物」という「作った人よりもお金を出した人が強い」[p.258 l.9]話が出てくるのも楽しい。
いろいろな視点があって、どの人もほかのジャンルに対するリスペクトがあった上で自分の考えを述べているように見える語り口なのもあって、とても楽しく読めました。
特にゲームさんぽの立案者のなむさんの小論が、学び方を体系化して論じているのでとっても楽しい。企画自体が気の向くままに歩いてみるのに対して、基本思想がしっかりしているから見ていて安心できるし楽しいんだろうな。
いいな~~~~。

■関係ないこと
子どもの視点について話す時
「僕たち大人はすでに言語で世界を分けてしまっていて、赤ちゃんにしか見れない未分化であいまいな世界認識にはもう戻れない。」[p.27 l.21]
を見てこの前言語学ラジオで見たところだー!って思って面白かった。
多分この回?あとで確認します。

私は言葉で物事をカテゴライズすることに関しておもしろがっているので、最近見ているコンテンツでこういうところがつながると面白い。
ついでに言語学ラジオで「友達を情報量で選ぶ/個人の体験に基づく話をされても面白くない」(意訳)って言っている駄弁り回を見たばっかりだったので、そこの温度差にもウケた。

ここまで

感想

#hon
チョコレート・アンダーグラウンド 』読了!
Twitterで名前が出ていたので読んだ。
もともと海外文学の話の流れで出てきていたけど、私も児童書に関しては翻訳されたものでも読んでいた気がする。
多分一文が短くて、比喩が少ないおかげだと思う。本作も読みやすかったです。
ロボット視点の翻訳文が読みやすいのも、比喩や婉曲表現が減って読みやすいからだな……。

以下ネタバレ感想

総括としては、ドキドキワクワク冒険活劇に見えて、滅茶苦茶ちゃんとしたディストピアと革命のお話だったので楽しかったです。

■装丁
装丁が滅茶苦茶可愛い~!表紙が肌色とチョコレート色の二色なのが可愛い。チョコレート銀紙から剥いてるみたい。
邦題の上に原題の『BOOTLEG』が入っているのも嬉しい嬉しい。私は邦題も原題も教えてくれる作品が好き。
遊び紙?みたいなところがでこぼこの紙使っているのも本文に対するワクワク感が高まって嬉しい~!

■シナリオ
チョコレート禁止令、圧制のしかたとそれに対する一般人の姿勢はそのまま現代にスライドできるので身につまされるぜ……。
「ほかの人に投票しなかったから、連中が勝ったの。『悪が栄えるためには、善人がなにもしないでいてくれればそれだけでいい』って言うじゃない。あなたは、まさになにもしなかったのよ」『チョコレート・アンダーグラウンド』P.15 l.3
現代じゃん!!!!!!!!!!!
冒険活劇とは言うが、革命のために大人がしっかりと介入しているし基本一番危ない役割は大人が担っているところが良かった。
加えて、登場する大人が全員いい奴という訳でも悪い奴という訳でもなく、面倒くさいからやらなかった・つい過去の栄光を求めてしまった・お金が手に入ったので調子に乗ってしまったっていうダメなところもそれを巻き返すために必死になるところも人間らしさ爆発していてとても良かったな~。
個人的に子どもより大人の描写の方が好きな気がする。これは私が社会的責任を持つ人間になったからだとは思うんですけど……。
キャラクターのその後の生活を見ても、勧善懲悪という訳ではなく最終的にみんなが良くなる方向に着地しているのも好き。
軽くて爽やかなシナリオ運び、どっかで感じたことあるな~って思っていたけど、『青空のむこう 』の作者さんだったんだね~。
作者あとがきも全力で遊んでいて、こういうのを読むとやはり私は児童書が大好きだな~という気持ちになる。
ここまで

感想

#hon
千個の青 』読了!

Twitterで知らない人がお勧めしているのを見て買った記憶。
少し不思議くらいのSF世界で人間関係と言葉でやり取りすることと貴方に理解してほしいと思うことをやってくれるお話。

以下感想

読めて良かったし、電子書籍で買っていたけど手元に置いておきたくて紙で買いなおした。
あなたと私は理解し合えないけれど、それでも人間は言葉を介さないとあなたの気持ちを想像することができない/しすぎてしまうから、例え傷ついてもあなたのことを理解したいし理解してほしいと思う。それでも言葉にしなくても伝わることもある。
そういうのを淡々とした言葉で静かにずっと語ってくれるので私はとても好き。

■翻訳について
私は翻訳本があんまり得意ではない(読みやすいと感じられる翻訳本をあんまり読んだことがない)んだけど、今作はなんか読みやすかった。
二人称の距離感が揺れているか?と思うところは合ったけど、基本的には遠くの距離から揺れている感じなのでそこまで気にしなくてよかったかも。
マーダーボット・ダイアリー 』も問題なかったんだけど、それはロボットが淡々としゃべる感じと翻訳文の冷たい感じが合っているように感じるからなのかな~とおもったんだけど、本作もそれが適用されている気がする。滅茶苦茶主観的だ……。
あと個人的に韓国語の翻訳本はそこまで読みにくさを感じない傾向にあるんだけど、ただの思い込みなのか相性なのかどうなんだろう。

■語り
コリーの語りが良い。
マーダーボット・ダイアリー 』の時にも感じたけど、自分は人間とは異なる(人間感情に憧れない)ロボットの語りがとても心地いい。
コリーは自分の語りで衝動の話をするけど、徹底して感情はないと言うし、それでも感情のようなものを感じると語るという塩梅が好き。感情に名前を与えないがそこに感情の動きを認めるという距離感私好みだ~。
あと作中で何度も何度も感情は完全に言葉にすることはできないし、本人でさえ完全に把握することが出来ないということを言ってくれるのが良かった。私が好きな価値観だからね!
ロボットだからコリーの気持ちは分からないよね、それでも彼を人間のように扱うことは両立できるしそれをコリーは嬉しく思うという話をやってくれつつ、トゥディの一人称は絶対に取らない構成とても好きだ。
ロボットでない人間同士だって気持ちはわからないよというのも勿論ベースにある……。
コリーが喜んでいると証明できるものはなにもないが、ヨンジェはコリーの言葉を信じた。コリーは、自分を生きていると表現してくれたことを心から喜んでいるようだった。チョン ソンラン. 千個の青 (p.263). 早川書房. Kindle 版.
あんまり本の好きな台詞とかをメモしたりしないんだけど、この本には線を何回か引いている。
また読み直して感想追記したいな。

ここまで

感想

#hon
七回死んだ男 』読了!
特殊設定ミステリが読みたくて買っていたのを最近引っ張り出した。

以下ネタバレ感想

総括としては滅茶苦茶面白かったです!私は特殊設定ミステリが大好き!

同じ設定を何度もやり直すことで登場人物のいろいろな可能性を見るというのも好きだし、なぜ毎回同じことが起きるのか?というのも好き。
ループごとに新しい情報が手に入ったり毎回同じ部分を知ることで重要な情報が何かを知れる構造が好き。世界における対称実験ができるところ。
それをしやすい媒体がマルチエンドノベルゲームだと思っているから、私はゲームを作っているんだけど、小説でも出来るんだ!と思ってそこがまず大好き。
加えて、主人公の誤認トリックを挟んでくるのが憎い。情報をたくさん知っている人間が、それゆえに情報を取り落とした誤認トリック!
カッコいい―!
トリックは全然わからなかったんだけど、読んでいる時に違和感のある部分が根拠になっていて滅茶苦茶良かった。
友理さんもループしてるのかな~と思っていたけど、全然違ったね。
特殊設定ミステリはそもそも犯人が誰か?だけでなくてその特殊設定は正しいのか?とかその設定で何ができるのか?というフーダニットやワイダニットだけじゃない推理が主になる点で楽しく読めるよな。
一応特殊設定は何個か読んだけど、その中でも一番楽しく読めました。

倫理観的なヤバさはあったけど、それらが全部老人の暴走で片づけられる腕力すごいと思う。
文体も砕けているおかげか、そういうノリでもまぁ飲み込めるので空気づくりって大事だ……。
ここまで

感想

#hon
マカロンはマカロン 』読了!
『タルト・タタンの夢』と『ヴァン・ショーをあなたに』の続き。
シリーズ物。

以下ネタバレ感想
総括としては、なんか全体的に視線や手つきが合わないな~という感じだった。

シリーズを通して女性の権利とか立場の非対称性について気にしているシナリオなのかな~とは思っていたのに今まで言及していなかったが、『マカロンはマカロン』でかなりしっかり描いていたから今回は言及します……。
そういう話をするにしては、語り手の主人公やバランサーの志村さん、探偵の三舟さんの言葉選びがちょくちょく気になる。「女性らしい感性」とか「女性実業家」とかわざわざ女性であることについて言及する必要はあるんだろうかとか。
『マカロンはマカロン』でも、本人がいない状態でその人のことをトランスジェンダーと類推してしゃべるのとかもアウティングじゃねーかと思うし。まぁ語り手の主人公が聞かないといけない+ページ数の関係なんだろうなと思う。
シナリオ全体がバイアスを指摘する話っぽいなのに、語り手や世界観の方の言葉選びのバイアスに自覚的かどうかが私にはわかりかねて、安心して読めなかった。
バイアスのない語りなどないが、性的嗜好とかジェンダー観とかについて語る話の中でそこに関するネガティブなバイアスを私が感じて合わなかった~……。
語り手の高築くん、そろそろ信頼できない語り手属性を作中で明示してくれないと辛いぜ!
あと前回からずっとそうなんだけど、作中の悪意を持った側の人が大抵その場にいないので、以降の展開が丸投げされるからスッキリしないことに加えて、毎回悪意の感じがすごい嫌なんだよな!
この語り手というか世界観、人間のこと嫌いか!?ってなる。
勧善懲悪にしろという訳ではないが、そういう有様に対してこの作品はどういうスタンスを取るのかというのが明示されていないからかもしれない。
とりあえず私向けの作品ではなかったな~と言う感じです。あと料理ものに関しては安心して読みたいという私の個人的な願いがあるのかもしれない。
今手元にあるシリーズ全部読み終わったので良かったです。
ここまで

感想

#hon
ヴァン・ショーをあなたに 』読了!
『タルト・タタンの夢』の続き。
以下ネタバレ感想

総括としては、不誠実がテーマなのかわからないが全体的にえぐみのある話が割と軽いエンタメとして提示され続ける+フォローがあまりされないのであんまり私向けではなかったです。

料理描写は前作はおいしそうだったけど、今回は基本その料理や受け手に不誠実さがあったりするのであんまり刺さらず。
ちゃんと美味しそうな料理描写は表題の『ヴァン・ショーをあなたに』くらい?
別にスッキリしない話が嫌いなわけじゃないけど、それをちゃんとスッキリしない話です!と提示してもらわないとどう受け取ればいいのかわかりかねる。

一発目に『錆びないスキレット』猫が事故で死ぬ+それを家族に言わない+原因をそのままにする話を軽く釘刺しで入れられてウギー――からスタート!
ついでに野良猫にエサをやってはなったままの三舟さんに釘は刺されるが、その後の斡旋先がこのざまなのでなんかもう嫌ッ!
逆セーブザキャット!
『憂さばらしのピストゥ』は明らかな悪役が出てくるけど、そもそも語り手が割とその人と感性が近い語りをするくせにそれに釘を刺さないのが滅茶苦茶気になる。もともとこの語り手、女性男性をひとくくりにして語って来ることが多いので割と苦手なんだけど、悪役と一緒の言動をしたらさすがにフォローを入れてほしい。
『ブーランジュリーのメロンパン』はむやみやたらに他パンを下げる人が出てくるし『マドモワゼル・ブイヤベースにご用心』は作中でもろ不誠実という単語が出てくるのでそのまんまだし、『氷姫』は語り手の男も氷姫もやってること滅茶苦茶だしそれを愛で丸め込んで提示してきたっぽいのが不誠実じゃねぇか!と思うし『天空の泉』もなんか愛で丸めて出してくるし『ヴァン・ショーをあなたに』はワインを植物に掛けるな!
みたいな本筋じゃないけど中途半端に本筋に掠る部分が気になるというのが全作品にあり、読むの辛かったな。
こじつけじゃねぇかみたいな奴もあるんだけど、こうも連続で嫌な感じの話で構成されるとそういう視線になるんだよ!
それも全部愛と表現するには自分本位すぎない!?って奴が多くてあんまり好きじゃない奴だし!
それが人間っぽさだよね~というには愛でまとめる力業を見せてくるから、もう人間だね~でまとめてくれた方がまだよかった。
短い話だからこそ、えぐみが浮いちゃって気になって流れるというのを続けてしまった感じがある。
多分それぞれの話がもっと分散していたらそんなに気にならないか、多方面で見せる構成なんだな~ってなるんだけど、一冊全部不誠実料理か不誠実受け手の話にされると辛い!
まぁこの本についてはネガポジのバランスが合わなかったな~という読後感でした。
あと1冊残っているんだけどどうなるんだ!
ここまで

感想

#hon
『タルト・タタンの夢』 読了!

Twitterでおすすめされたのを見て買ったのかな?
覚えていない。なんかkindleに入っていた。
料理とミステリの短編集。

以下ネタバレ感想


総括としては食にまつわるお話が好きなのと文体も軽かったのでサクサク読めました。登場人物も漫画的なので読んでて楽しいね。

ミステリとしては、食材の特徴や歴史などを知っているかどうかなので推理をするタイプではないです。特定のジャンルに絞ったミステリーはそうなりやすい気がする。それに短編だから知識一個知っていれば完答できるシンプルな謎が多い。
登場人物が漫画的なので、どうしてその事件が起こったのか?という動機の方にフォーカスして読む方が楽しく読めると思いました。
料理は相手にどう受け取ってもらうのかが重要だったりするし、全体的にそういう謎が多かった気がするな。
志村さんが可愛かったので「ガレット・デ・ロワの秘密」が一番好き。

食べ物の描写が美味しそうなので、そういうのを読んでいるだけで私は十分満足だったので楽しかった。
軽い読書とか息抜きに丁度良い作品でした。
ここまで

感想

#hon
『僕は令和で棋士になる 江戸前期に夭折した少年棋士が令和へタイムスリップ』 読了!

将棋題材小説シリーズ。
Amazonのアンリミデッドに入っていたので読みました。
将棋ものでラノベみたいな長いタイトルなの初めてみたかも。

以下ネタバレ感想

令和で棋士にならないんかいッッッ!!!!
総括としては江戸と現代の差を出しているので棋譜を並べるのは楽しかったです。SF要素は棋譜のためのギミックだったので期待するには肩透かしという感じ。

■棋譜について
最初に出てくるのが雁木でテンション上がっちゃった。
江戸時代からある+当時と型が少し違う+ちょっと前に流行ったので採用されていることに違和感が少ないというので雁木だったんだろうな~。
私は5三銀型しか指さないので、むしろ印達さんの気持ちに近かったけども。
ほとんどの対局が全部書いてあったので、並べるのが楽しい。
マイナビの方で買うと棋譜データ貰えるらしい。
本編では棋譜解説とほぼ同じ書き方なので、これ将棋知らん人からするとショートカットするページになるんだろうな~と思いました。
あと私は該当ページの棋譜を読み切ってから並べるので、毎回ざっと流し読んだら印達の勝ちがさらっと確定して笑いました。
特に最後の決勝戦くらいは、最終手5手前くらいまで図式で描いて、最後の5手は文章で書いた方がお互いにテンションぶちあがらないか!?
棋譜途中図まで全部描いてからその後に解説が付く形式だと、感想戦と似た感じになって印達に同調して読めないんだよ~。
そういう描き方に関しては漫画の方に部があるのかな~。でも絶対小説でもできるよな~。

■将棋じゃない部分
SF部分の解説フェーズいる!?!??!?!いや現代に来るきっかけの部分だからいるんだけど、それにしては長いし軽い。
なんの根拠もないSF小説好きたちが好き勝手言ったのを、何の根拠もなくこっちがいい!で採択していくので、「まぁじゃあもうそれでいいんじゃない……」となった。
本当かどうかはわからないけど、それの方があなたのことを忘れなくて済むのだからそうであってくれと願う様と恋愛を絡めている部分なのかもしれない。私はそういう機微がわからない。
途中の入院時のSF解説フェーズのタッチが軽いので、真面目に読む必要があるのかないのかわからず、結局何がきっかけて戻ったのかもわかっていないので本当にいる!?!?!?
なんとなく後味としてはバタフライエフェクトの最後みたいにしたかったんだろうなとは思う。
SF部分も恋愛部分も人間関係部分もかるいタッチで進んでいくので、人によっては読みやすいといえば読みやすいと思うが、私は情報量が少なくて読み応えがないと受け取っちゃったな。
コロナの話を絡めてくるのかと思ったらそうでもないし。これは年代を合わせて没入感高めるためなのかな。
結核の話をすることで、今も昔も病気の危機は同じようにあるけれど、将棋のように医療も進歩しているよ!という話なのか?わからない。
色んな将棋じゃないフックを作ろうとしたのかと思うけど、フックにしては私は邪魔だなと思ったので私向けではなかった。
かといって将棋知らない人が読むには棋譜部分が多すぎるので、なんかもうどっちかに振り切ればよかったのではとは思う。

そんな感じなので将棋が好きな人は棋譜部分はオススメするけど、シナリオ部分では将棋好きにもそうじゃない人にもおすすめはしないくらいだった。

ここまで

感想

#hon
ダークゾーン 読了!
私は将棋を題材にした漫画とか小説とか映画とか見るのが趣味なんですが、「将棋&バトル」と言われてので買いました。
「何だこれは!?」(KADOKAWA説明文)
何だったんですか!?

以下ネタバレ感想


総括としては、性格の悪い人が性格の悪いまま自分の世界に引き篭もって終わったので、そうだね~と思いました。

■最後まで変化しない主人公について
主人公の塚田が最初から最後まで性格悪いし嫌な奴だし内省しないし他責思考故の信頼できない語り手で面白かった。奥田君と理紗さんに謝ってほしい。
そしてその性質のまんま突っ走った結果ダークゾーンに居直ったという男なので、可愛いね♡
この可愛いね♡は全然褒めてない可愛いね♡です。
ダークゾーン2が出て、塚田が敵キャラとしてぼこぼこにされるのを見ないと許せないよ。
将棋指しで主人公という設定を負っているにも関わらず、ここまで嫌なキャラ初めて見たかも。
そして最後まで自分の性格の悪さや視野狭窄に言及せずに終わるのですごい。
永遠に理紗と一緒にいたいからあの世界を作ったよ!という最悪状態をネタ晴らしのフックにするなら、そりゃ主人公は成長しないよな。
まぁそこフックになっているかというと、読む前から「これ主人公(塚田)の精神世界っぽいですよね~」って言っていたので……。

塚田の成長のしなさ、自己世界で一人将棋(っぽいゲーム)し続けているだけで成長はないという話なんだろうか。
一人将棋も勉強になると思うけど、塚田君は性格が悪い他責思考だから自分が悪いと結論づけるのには難しいということなのかもしれない。
一応本編で理紗や教授や河野のアドバイスのおかげで自分の想定していなかった結果を得ることが出来たという側面があるから、何百回も続けて塚田の記憶の蓄積が続けば変わるかもしれないという余白はあるのか?
でもその閃きだってゲームルールに即した認識の変化であって、他人に対する印象はずっとそのまま(むしろ現実より悪い状態)だったから、あくまで自分の中にはある手法ではあるという解答であるなら、塚田君は一生あの中っぽい~。
でも「出て来なくていいよ……」よりも、「さっさと起きてごめんなさいしろ!」という気持ちなので、ダークゾーン2でぼこぼこにしてほしい。出ません!

■将棋
17
これで将棋定義について言っていたけど、作品紹介で将棋&バトル!と言われているのに対して本文中で三回くらい「これ将棋と全然違くね?」って言われていて笑った。
違うよな!!!!!
ついでに本編では「完全情報ではない」って言われていたけど、個人的には以下では!?と思いました。
2人:×(コマが自立して戦っている)
零和:○
有限:△(ダークゾーンに手番という概念がない)
確定:×(出現位置がランダム)
完全情報:×(コマの位置もコマの役割も分からん)
最後の方にまた塚田君が「やはりこれは将棋!」って言い始めたのでもうなんでもいいです!
あと作中で突然まぁまぁ長尺で囲碁ディスが始まったのなんだったんですか!?
塚田、全然内省しないので囲碁ディスに対してのフォローを全然してなくてびっくりしたよ。
い、いいんですか!?

■塚田を取り巻く人たち
ダークゾーンを作ったのが塚田という前提の感想。
あそこにいる人たちは全員現実の人たちを塚田が受け止めた結果考えたコマたちなので、奥田の性格がクソ悪いのとかラミアの見た目が醜いのとか、理紗が超聖人風なのもそれは~!そう!嫌ッ
自分の見た目に対して理紗に「冗談でもかっこいいよって言えよ」って言ったくせに、理紗のプロポーション後にその姿を直視することができないとかいう+冗談でもきれいだよとか言わん精神性で、自分が嫌いな人たちの見た目が醜悪になってるの、ここここコイツ~^^っ
全く同じ役職の理紗と梓の見た目が全然違うのも、塚田が嫌いだからなんだろうしな。こいつ……。
にしても断章で梓のことを「蛇女」って呟いたのって、ダークゾーンが本当に別世界にあってその記憶が混線した結果時系列が混ざったのか、塚田のオリジナル言語なのかわからないな。
仮に後者なんだとしたら、塚田君オリジナル感覚で出ているのに自分でゲームっぽいと言及する(自分はこれがカッコよくないことをわかっていますよという防衛線を張る)という嫌なプライドの高いふるまいなので、可愛いね♡ポイントが高まる。
理紗が奥田君をかばうのは「塚田自身は本当は奥田が悪いと思っていないけど認められないのを理紗が代弁している」のか「理紗は人のことを疑わない聖女のような生き物だから、最後まで奥田のことをかばうだろうと塚田が信じている」のか「理紗は奥田のこと最後まで庇いそうだよな……アイツ奥田とデキてたもんな……と塚田が思っている」なのかどれでもないのか~。
理紗のプロポーションの見た目的に3つ目っぽそ~。
キャラクターの手触りから塚田の感性を見るの、面白いけどその対象の塚田が嫌な奴過ぎて普通に嫌だな。

最初は何を楽しんで読めばいいのかわからなかったけど、途中からこれB級映画のノリじゃん!と思ってからは一人でツッコミ入れながら読んでいました。
楽しかったです。
ダークゾーンは将棋ペンクラブ大賞 で特別賞を取っているんですが、「将棋というゲームの可能性を限りなく広めたもの」と書評されているぜ!
いろんな将棋の可能性を見よ!
ここまで

感想

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